歯と健康寿命  〜噛み合わせや咀嚼は寝たきりや痴呆を防ぐ〜

 健康日本21で目的の2番目に挙げられる「健康寿命」は、「認知症もしくは寝たきりにならない状態で、生活できる期間」を意味しています。認知症や寝たきりになると、生命があっても自分の望む生活が困難になる、誰かの手助けを借りないと外出も困難になるなど、さまざまな面で支障が出てきます。これでは「生活の質」を高めることができなくなるため、できるだけ自分の意思で行動や外出のできる生活期間を延ばすことが大事です。
 とはいえ、いろいろなことに気を付けていても、年を取れば徐々に不都合は出てきます。高齢になってからは、「病気や障害を持ちながらも自分のやりたいことのできる生活が可能か」がポイントになります。
 その自立した生活を脅かす最大の原因として「寝たきり」と「認知症」が挙げられます。寝たきりになる原因は、脳血管疾患や事故などもありますが、最も多いのは転倒による大腿骨の骨折です。転倒を防ぐためには、平行感覚・バランス感覚を維持していくことが非常に重要になります。この大切な平行感覚に影響を及ぼす原因に、咬合の狂いがあることが分かってきました。
 歯の噛み合わせがうまくいっていない人は、両手を広げて片足で立ち、何秒間立てるかという「開眼片足立ち時間」を測ってみると非常に短いという調査結果が出ています。また、総入れ歯の人を調べた結果、入れ歯を入れていると立っていられるのに、入れ歯を外すと倒れやすくなるという結果が出ました。その他、握力や骨量など、寝たきりにならないためのさまざまな基礎体力を調べた結果、いずれも歯の数と関係していることがわかりました。万一、歯がなくなっても、きちんと合った入れ歯を入れて、正しい噛み合わせを確保しておけばバランス感覚に影響はありません。
 歯は脳の働きにも関係しているかどうかを脳の血流量で調べた結果、安静時と咀嚼時では、咀嚼時の方が脳に流れる血液の量が増えていました。噛むことで酸素が脳に送られ、脳細胞を活性化しているのではないかと考えられます。かたいものをしっかり噛むことが脳の働きにも役立っているといえます。
 現在は、歯がなくても噛める柔らかいものが多く売られていますが、自分で噛める間は硬いものを噛むことが大事です。歯を残して咀嚼力を残すことは、寝たきりや認知症の予防にも繋がります。



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