現在では、高齢者や子供の体の原理が少しずつ分かってきていますが、以前はあまり分かっていませんでした。そのため、今も30代、40代の正常値を基に、70代、80代の人も検査を受けています。
例えば、腎臓からエリスロポエチンという造血ホルモンが出なくなると、貧血になってしまいます。最近ではこのエリスロポエチンを注射し、貧血を解消することができますが、高齢者はある程度、貧血傾向の方が血液をサラサラにするため、良いともいえます。加齢に伴う動脈硬化になっている血管に、若い頃と同じような血液が流れていくと血管が詰まる危険性が高くなります。そのため、年齢を重ねるごとに貧血傾向に傾いていくのは、生理的にうまく機能している状態であるということが、徐々に分かってきています。若い人のヘモグロビン値より低目が老人では正常といえます。
私が大学病院で勤務していた30年前、病院で亡くなる患者に対し、医師は足りなくなったタンパク質や脂肪、抗生物質などを補うために、いくつもの点滴を行っていました。しかし、多くの点滴を行うと、体内の水分量が増え、むくみや肺水腫などの原因となります。この肺水腫は、陸にいながら溺れたような状態になり、患者は非常に苦しみます。つまり、近代医学を駆使して、必要な処置「以外」のことも行っていた結果になっていたのです。