インフルエンザは感染症です。感染症の多くは、放っておくと広がります。拡がるのであれば、一人一人の患者に対する治療や医療だけでなく、拡大しないための対策や予防方法など、全体を考えた公衆衛生対策が必要です。
どんなに医療機関が頑張っても、患者数が増えてくると、医療機関だけの問題ではなくなり、社会不安となり、世の中全体が騒然としてきます。スペイン型インフルエンザの時も「火葬場が満杯で断っている」「生命保険会社が潰れそう」「交通機関に影響が出ている」といった記事が連日新聞などに載っています。また、死者と言うことではインパクとの低かったアジア型インフルエンザでも、流行時には旅行や集会の禁止、学校が休みになるなど、社会全体が大騒ぎになったようすが、当時の新聞報道から窺えます。このような混乱を避けるため、医療関係者が準備するだけでなく、社会や個人でもあらかじめ準備できることを考え他方がよいと思います。急に対策を考えても追いつかないことになるのは、これまでにたくさんの実例があります。
新型インフルエンザのパンデミック(地球規模での大流行)時は、感染症を抑える抗ウイルス薬の開発やワクチンの研究など、医療・医薬品による対処、介入が必要になります。医療の整備ももちろん必要です。さらに、手洗いやマスクの着用など個人衛生の問題や、人の動きに制限を付けるなど感染症を防ぐための公衆衛生的な対策が大切です。
この他、「ソーシャルディスタンシング: Social Distancing(社会的距離をあける)」という考え方も重要です。ヒトの密集状態をあける、つまり混雑した社会から、正月の街や電車のようにスカスカにしようと言うものです。学校の休校、会社の活動の低下、乗り物の間引き運転、などがこれにあたります。しかし、これを急激に行うと、世の中が大混乱をしてしまいます。ですから、新型インフルエンザが発生する前から予防法や対策について、あり得そうなことを伝えていく、知っておくということが不可欠です。
万が一、新型インフルエンザが発生した場合には、どのようにすべきかを決めておくことも大事です。全ての人が例えば2ヶ月間、食料や薬を家に蓄え、一歩も外に出なければ感染症は広がりませんが、これでは社会が維持できません。最低限動かさなければいけないものは何かを考え、医学だけでなく、各分野で取り組むことが必要です。現代社会は便利な、いや便利すぎる世の中ですが、2ヶ月位、今の生活レベルを少し我慢すると医療や社会の混乱を防ぎ、犠牲者を増やさずに済むのではないでしょうか。