インフルエンザに限らず、感染症は、物から人へ、動物などから人へ、そして人から人へとうつっていくため、その感染経路を断つことが大切です。例えば、くしゃみなどをした手で資料を渡した場合、病原体の付いた資料を受け取り、その手で口を覆ったり、鼻をこすったりすると病原体がうつっていきます。これが「接触感染」といわれるものです。また、人が話をしている時に飛び出る、唾やしぶきなどに含まれた病原体が原因となる「飛沫感染」があります。この飛沫感染は唾やしぶきなどの水分に含まれているため、1メートル前後がおおよその感染範囲となります。さらに、飛沫感染よりも病原体が遠くに飛ぶのが「空気感染」です。これは、空間に病原体が漂うような場合で、結核・はしか・水ぼうそう・ペストなどの限られた病気ですが、特別の注意が必要です。
インフルエンザの場合、例外はありますがおおむね飛沫感染が主体であると考えられます。この予防にはマスクなどで口や鼻にバリアーを付けることが効果的といえます。しかし、病気にかかりたくない人がマスクを付けるよりも、病気に罹っている本人がマスクを付けるほうが、病原体をまき散らすことを防ぐという点でより効果的です。人にうつさないための優しいマスク、それが「咳エチケット」といわれるものです。
空気感染予防にも有効な医療用の高性能なマスク(N95マスクなど)は非常に良い物ですが、目が細かくぴったりと顔面につけるため息苦しくなりやすく、通常の生活には不向きです。途中で苦しくなり、マスクを外してしまっては高性能なマスクをつける意味がなくなるどころかむしろ危険になります。高価な高性能な物よりも普通のマスク(不織布性マスク、サージカルマスク)をしっかりと付ける方が有効です。接触感染には、手を洗って病原体を洗い流すことが有効な予防になります。厳密な予防をする場合には、手袋をはめます。
空気感染は限られた病気あるいは、特殊な状況だけのため、医療機関などでは注意が必要ですが、一般の生活の場面ではこの予防は不可能に近くなります。ですから「はしかなどの場合には防ぐことが困難で、すぐに広がってしまいます。
日本では普段から手を洗ったり、うがいをしたり、冬になるとマスクをする人が増えてきます。しかし、このようなことを日常の場で習慣にしている国は少ないようです。WHO(World Health Organization:世界保健機構)も世界に向けて咳エチケットの啓発を進めていますが、普段から咳やくしゃみが出たらマスクやハンカチなどで覆うといった習慣がないため、なかなか浸透していないようです。手洗いやうがい、マスクの習慣を身につけておくと個人の衛生レベルがアップし、何かあった時に非常に役立ちます。