新型インフルエンザ 〜動物社会のインフルエンザが人間社会に時に入り込んでくることが原因〜

 香港で鳥インフルエンザウイルスがヒトにうつったケースは、動物のインフルエンザウイルスがたまたまヒトに感染した、と言える状況でした。しかし、これがヒトに感染をしやすいヒト型としてウイルス変異が生じた場合、私達が普段罹るインフルエンザウイルスとはタイプが大分違うため、誰も感染の経験はなく、免疫もありません。したがってこのようなインフルエンザウイルスが発生した場合、多くの人が同時に罹る可能性があります。これが最近、話題になっている「新型インフルエンザウイルス」の発生です。これは必ずしも「新型」ではなくても、かつて人類が過去に罹ったことのあるウイルスが再来することも、可能性として含まれるものです。
人にとって新しいインフルエンザウイルスの登場は、鳥のインフルエンザウイルスが人間社会に直接入ってくる場合もありますが、鳥のインフルエンザウイルスに罹った人が、たまたま人のインフルエンザウイルスにも同時に罹り、人がうつりやすいインフルエンザウイルスが生まれてしまうことも、理論的な可能性としてあります。
また、新型インフルエンザの発生には、次のような説が以前より考えられています。渡り鳥が鳥同士であるニワトリなどにインフルエンザウイルスをうつし、そのウイルスはブタに感染することがあります。ブタは鳥インフルエンザウイルスという鍵を引き受ける鍵穴(レセプター)を持っているからです。またブタは、ヒトのインフルエンザウイルスを引き受ける鍵穴も同時に持っているため、両方のウイルスの同時感染を受ける可能性があります。そうすると似たようなウイルスがブタの体内で混じり合い、遺伝子を交換し、新たな組み替えウイルスが登場する可能性があります(遺伝子の交雑)。そうするとヒトへのうつりやすさと、鳥インフルエンザウイルスの性質を兼ね備えた、ヒトにとって新たなインフルエンザウイルスが登場することになります。終戦後に流行したアジア型インフルエンザ、現在流行している香港型インフルエンザがこのような形で生まれたのではないかと考えられています。
このようが常に起きるわけではありませんが、10~数十年に1度、動物のインフルエンザが偶然、人間社会に飛び込み、ヒトで新たなインフルエンザの大流行(パンデミック)が生じることになります。
毎年のように流行するインフルエンザについては、感染力や症状、致死率などよく分かっています。鳥インフルエンザウイルスの感染も、全世界で400人ほどの発生がありその様子が大分分かってくるようになりました。鳥から人に罹るけれども、ヒトからヒトにはうつらず、症状は重症で、死亡率は60%にものぼることが分かっています。
新しく生まれるかもしれないインフルエンザについては、その感染力や症状、重症度などが、目下の所事実がなく、よく分かりません。とはいえ、私達は過去にも新しいインフルエンザウイルスの登場、それによるインフルエンザの大流行(パンデミック)を経験しているため、その時の状況に照らし合わせた対策がまず必要である、と考えられています。鳥インフルエンザウイルスの直接感染者の致死率は60%にも及んでいますが、このようなタイプのインフルエンザウイルスが、そのまま人間社会に直接来ることはないと考えられています。感染力が強い病気は、ヒトが動き回ることができないため、ある地域だけの限定的な流行に留まる可能性が高いからです。ヒトに広く感染する病気というのは、一方ではその病気の重症度はある程度下がってくる、というのが一般的な考え方です。但しその度合いは、未知のものであるだけに不明であると言わざるを得ないところです。



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