「新型インフルエンザ」が発生した時、それはどの程度危険なのか、どれ位の人が病気に罹るのかを想定しないと準備にとりかかることが出来ません。そうであれば少なくとも過去の事実としてあった、大きな被害を受けたスペイン型インフルエンザに合わせて、被害がどれ位になるかを推定する必要がまずあります。まずは関東大震災を想定して・・・・・、ということと類似の発想です。
米国のMeltzerという研究者らが、スペイン型インフルエンザやアジア型インフルエンザを考慮し、米国に於いて人口の25%が新しいインフルエンザに罹るとするとどういう事態を想定しなければ行けないかというモデルが作られました。これを日本に当てはめてみると医療機関を受診する患者数は1300万人〜2500万人となり、過去のアジア型インフルエンザ並みの重症度であれば亡くなる患者数が約17万人、スペイン型インフルエンザ並であれば約64万人が亡くなるという想定が国によって行われ、これらのもとにまず準備を進めていくべきだと考えられたものです。しかし、この全人口の25%が新型インフルエンザに罹るということ自体が想定のため、実際は10%位で済むのか、40%位になってしまうのか、いろいろなパターンがあり得ることになります。
次のような例もあります。アフリカのマダガスカル島ではあまり人の動きがないため、しばらく普通のインフルエンザの流行がありませんでした。しかし、恐らくは旅行者がインフルエンザウイルスを持ち込み、住民に感染させてしまいました。そのインフルエンザは、香港型インフルエンザでしたが、マダガスカル島では長い間インフルエンザが発生していなかったため、免疫を持った人がほとんどなく、結果として60%もの人がインフルエンザ様疾患に罹ったと報告されています。このような例を考慮すると、25%の感染率は甘いようにも思えます。一方、新型インフルエンザの発生で死亡者数の予想の高さに驚きますが、これらの数字は、抗インフルエンザ薬やワクチンの影響、医療状況、衛生状況などは考慮されておらず、何も対策をしていない場合の結果です。したがって正確な数字を出すことははなはだ難しいことですが、少なくとも多くの患者発生は十分考えられるので、対策を1つずつ積み重ねれば犠牲者をできるだけ少なくし、社会の混乱のレベルを下げることが必要です。準備によって社会全体の混乱を少なくすることが、新型インフルエンザの対策で重要なポイントです。