このようなサルトジェネシスの原点となるのは、実存分析(ロゴセラピー)です。これは、オーストリアのビクトール・フランクル博士によって唱えられたもので、人間の本質的問題は、生きる意味への気付きで、精神分析や行動療法を補う方法というものです。
フランクル博士は、過去にナチスによってアウシュビッツ収容所に入れられ、生還された経験を持っています。収容所での辛い経験の最中、周囲の人を観察し、辛い状況の中でも周りに食料を分けたりできる人と、自己中心的な考え方で獣のような行動をとる人に分かれていることに気付きました。周囲を気遣える人達は、どんなささやかなことにも生きる意味を持つことができ、自分の利益だけを考える人達には生きる意味が欠如していたそうです。
フランクル博士は非常に楽観主義者で、収容所で高熱を出し、苦しんでいる時にこの体験を本にし、それがベストセラーになり、人々から喝采を浴びているところを考えていました。その後、フランクル博士は収容所より生還し、本を執筆して、予言通りその著書は大ベストセラーとなりました。
『私(永田先生)は病に侵され絶望していた時、フランクル博士の「人間、誰しもアウシュビッツを持っている(誰にも苦しみはある)。しかし、あなたが人生に絶望しても、人生はあなたに絶望しない。あなたを待っている誰かや何かがある限り、あなたは生きることができるし、自己実現できる。」という言葉によって奮い立たされました。人生の意味を考え、自分を必要としてくれる人がいるなら、自己実現できるし、生き延びることができると考え、リハビリや治療を増やして回復に努めていきました。』
神経難病の患者や癌の患者に生きる意味を問うと、「何も無い」と答えることが多いようですが、誰にも何かがあるはずで、まだそれに気付いていないだけです。医療者の役割は、それを一緒に気付くことだと考えられています。