サルトジェネシスとは 〜健康・病気・死を一連の連続性の中で捉える概念〜

 イスラエルの健康社会学者のアーロン・アントノフスキーによって提唱された「サルトジェネシス(健康創成論)」と「パソジェネシス(病因追究論)」という概念があります。
現代医学は、健康は絶対的健康、病気は絶対的病気、死は死であると捉え、病気のかかり始めも治りかけも、それら全てを1つの疾患概念として考えています。現代医学では、パソジェネシスが基になっているため、聴診や打診、血液検査、心電図などで病気の場所を調べ、治療はその病気を叩く、潰す、切り取る、抑えるといった方法で行っていきます。しかし、サルトジェネシスは、今までのように健康・病気・死をそれぞれ分断して捉えるのではなく、1つの流れの中で捉え、それぞれのステージにおいて個別的な健康回帰を図っていくという考え方です。
『私(永田先生)は、以前、筋肉の病に侵され、入院生活を送っていました。その時に処方された薬の副作用で、寝たきりの生活となってしまいました。その病気は治った症例がなく、医師からは一生歩くことも、車椅子も無理だと宣告されました。治療方法も見つからないため、リハビリを勧められましたが、病院を退院し、温泉病院で2年間治療を受けながら過ごしました。その闘病中に出会った鍼灸師によって、私は医師に復帰することができました。
鍼は、その人の持っている生命力を高めることがホルモン研究などから分かっているため、私は毎日、鍼治療を受けていました。担当の鍼灸師も過去に癌を患ったことがあり、患者の気持ちの分かる方でした。死を意識し、気持が塞ぎ、鬱的になって鍼灸師にあたった時、鍼灸師は私のために泣いてくれました。そのことによって、今の自分を振り返り、足が悪くても学生に講義ができれば良い、論文が書ければ良い、実験の指導ができれば良いというサルトジェネシスの考え方に転換することができ、前向きになることができました。』
これは、人間の秩序とバランスの問題です。人間には問題のある部分があっても、活性化すべき資源も必ずあります。パソジェネジスの悪い部分を全て切り取って捨てるという考え方も大事ですが、それと同時に使える部分を活性化させるという考え方も非常に重要になります。医療とは、パソジェネシスとサルトジェネシスを並立させることです。尊厳ある死は、尊厳ある生によって養われるということです。



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